仮説から成果までの論理図 · 既存研究を使った記載例

建玉状態は、決済フローを通じて
方向売買を改善するか

「建玉に情報がある」から「売買に役立つ」までを、一つの結論にまとめない。
間にある命題ごとに、何を比べ、何が分かれば次へつながるかを書く。

2026年10月7日の整理。既存研究の結果を対応させた例であり、当時の事前設計を書き直したものではない。新しい学習・バックテストは行っていない。

1. 仮説・問いの流れ

最終目的は、先物の方向ポジションで費用・リスク込みの価値を得ること。今回の仮説は、そのための情報が「将来の決済フロー」を通じて現れる、と考える。

仮説の接続と、現在の答え 模式図・矢印は検証する関係
市場で起きる現象を、事前に予測できるか
入力判断時点の建玉状態

含み損益・保有時間・
過去の増減や決済履歴

P1 ↓状態を使うと
将来の決済をより正確に読めるか
中間の予測対象口座ごとの将来の積極的決済

決済が起きる確率 × 起きたときの量

片側などに限った改善あり
P2 ↓口座予測を合計しても
買い/売りの偏りを正確に読めるか
中間の予測対象市場へ出る決済フロー

期待買い決済 − 期待売り決済
価格モデルには直近出来高で割った圧力を渡す

ETHは状態削除との比較で改善/SOLは判断不能
P3 ↓その圧力は、既存情報を超える
将来価格の情報になるか
最終の予測対象将来の価格変化

既存情報のみの価格予測と、
決済圧力を加えた価格予測を比較

ETH・SOLとも追加価値は判断不能
ここからは、予測を自分の行動へ変換する設計市場の説明と、売買の使い方を分ける
予測+現在建玉+費用

今入る価値/持ち続ける価値

売買方針

入る・維持・増減・閉じる

P4:費用後の成果

情報を追加した口座は、
追加しない口座よりよいか

完全な口座比較は未実施

ロングの積極的決済は売り、ショートの積極的決済は買いになる。ただし、決済の売りを予測できても、反対の買いや新規建玉が吸収すれば価格は下がらない。このため、決済予測と価格予測を別の命題にしている。

検証記録:図の対象・用語・期間

2. 各接続を、検証できる命題にする

単に箱を矢印で結ぶだけでは足りない。各接続に「何と何を比べるか」「何を測るか」「結果で何を判断するか」を付ける。

P1 · 建玉状態 → 将来の決済

損益・保有時間などを使うと、決済の予測は改善するか?

状態あり

共通の入力
+損益・保有時間・損益の経路

同じ将来の決済を予測
状態を除く

共通の入力のみ
増減・直近決済履歴は残す

原結果:部分的な支持 SOLの売り側では状態削除より発生・期待量の予測が改善。一方、全側・全指標で改善したわけではない。

検証記録:対象・比較・判定
  • 単位:観測建玉×秒。対象は今後10秒のtaker決済の発生と量。繰り返し観測を独立した注文数とはしない。
  • 表現:深さ3の頻度木と、決済発生時の削減比率を予測する木。発生確率×条件付き比率×判断時点の建玉量で期待量を作る。
  • 比較:23入力のfullと、損益・保有時間・経路の8列を除いたno_state。直近増減・決済履歴は両者に残る。定数との比較は別に行った。
  • 指標:発生はlogloss/Brier、期待base量は平均二乗誤差/平均絶対誤差。確率校正も確認。
  • 判定:基準の誤差−候補の誤差。原仕様の95%日単位区間が正なら支持、上端が0以下なら支持されない、0を跨ぐ・支持不足なら判断不能。指標・側ごとに判定する。
  • 原結果:ETHの決済予測/SOLの決済予測。

P2 · 口座の予測 → 市場の決済フロー

個々の予測を合計したとき、買い・売りと差引き量も正確か?

計算上の集計と、精度の検証は別 模式図
各口座の期待決済USD量 = 決済確率 × 決済時の期待削減比率 × 現在の建玉USD額
ショートの削減を合計

期待買い決済

−
ロングの削減を合計

期待売り決済

差引き決済の予測を、実際に発生した差引き決済と比較する

原結果:銘柄で異なる 差引きドル決済はETHで状態削除より改善、SOLは判断不能。ETHも定数基準との比較は判断不能だった。

検証記録:集計誤差と見落としやすい点
  • 単位:対象建玉を集計した時刻×銘柄、将来10秒のUSD量。全対象の正解が既知の時刻で評価し、欠損を決済ゼロにしない。
  • 比較:full/no_state/学習期間だけから作る定数予測。買い・売り・差引きそれぞれの平均二乗誤差等、95%日単位区間。
  • 発生確率と条件付き量から期待量を作る計算は整合的でも、推定の誤りは残る。大口の量誤差、買い売りの相殺があるため、口座平均の発生精度だけでは集計精度が決まらない。
  • この集計は選定建玉の決済のみ。全ての新規注文・板の供給を予測するものではない。
  • 原結果:合計ドル決済の比較。

P3 · 決済圧力 → 追加の価格情報

決済圧力を加えると、既存情報だけより将来価格を読めるか?

A:既存情報のみ

価格・出来高・匿名フロー
+建玉総額・含み損比率

同じ10秒リターンを予測
B:既存情報+予測圧力

Aと同じ情報
+差引き期待決済USD/直近60秒出来高

原結果:判断不能 ETH・SOLとも、価格誤差の追加改善は確認できなかった。誤差差の区間はゼロを跨いでいる。

検証記録:価格モデルと比較条件
  • 対象:strict-priorの約定価格を基準にした10秒リターン。実約定やmidの予測とは区別する。
  • モデル:過去だけで学習した決済予測を、後半28日の4週の時系列予測として保存し、その予測圧力からRidgeの価格モデルを学習。
  • Aの入力:価格リターン1/10/60秒、60秒変動、出来高10/60秒、匿名signed flow、long/short建玉総額・含み損比率。Bは予測圧力を追加。Aは「建玉情報が一切ない」モデルではない。
  • 比較:A対B、B対状態削除圧力のCなどを、同じ時刻・対象期間で評価。原primaryはAのMSE−BのMSE、97.5%日単位区間。10日以上の支持など原仕様の条件を保持。
  • 将来価格の欠損や過去ラグの有無は予測評価の条件。未来が測れないことを、その時刻で取引しなかった判断へ置き換えない。
  • 原結果:価格への追加価値。

P4 · 予測の利用 → 費用後の成果

その情報を使うことで、実際の売買方針は改善するか?

情報を追加しない戦略

予測A → 注文 → 口座損益

同じ資本・費用・評価期間
情報を追加する戦略

予測B → 注文 → 口座損益

完全な比較は未実施 原研究は一つの固定ルールの条件付き参照損益まで。ルール選択・完全な口座経路・新しい未使用期間での確認は行っていない。

検証記録:既に測ったこと/今後の比較案
  • 既存ルール:10秒リターン予測が+9bpを超えるとlong、−9bpを下回るとshort。1万USD、一銘柄一ポジション、10秒固定保有、重複エントリーなし。
  • 既存費用:過去1秒以内の約定価格を参照し、往復9/12/20bpを控除。0/250/1000msはsource時計の感度で、実受信/約定遅延ではない。端点欠損intentは保持。
  • 原結果:SOLはfull/controls/no_stateで同じ10件を選択。正の参考平均でも圧力追加の改善ではない。ETHの追加intentには端点欠損があり、全intentの経済価値は判断不能。
  • 今後の設計案(未実施):同じルールでの情報追加比較に加え、両側を同じ探索条件で調整した比較を行う。予測モデルの設定も必要に応じて含める。
  • 目標関数・閾値候補・保有方式・費用モデル・最低支持など、新規比較の数値条件は未固定。開発区間で固定してから未使用の後続期間へ進む。今回の図の作成では選ばない。
  • 原結果:条件付き参照売買。

3. 今回、論理のどこまで届いたか

途中の一部には追加情報があったが、価格への追加価値と、採用に足る費用後利益は確認されていない。

P1:口座の決済

SOL売り側など
局所的な改善

P2:差引き決済

ETHは状態削除より改善
SOLは判断不能

P3:価格

ETH・SOLとも
追加価値は判断不能

P4:戦略

参考売買まで
採用利益は未確認

以下は原結果の再表示。既存情報のみの価格モデルに決済圧力を加えたときの、平均二乗誤差の改善を描く。右側ほど改善、左側ほど悪化。

価格予測への追加価値:点推定と97.5%日単位区間 実測・原結果の再表示
決済圧力を加えた価格予測のMSE改善ETHとSOLの点推定は負。97.5%日単位区間は両方ゼロを跨ぐ。単位はリターンMSE差の10のマイナス10乗。-4-3-2-10ETH判断不能SOL判断不能追加改善なし← 悪化  MSE改善(×10⁻¹⁰)  改善 →

両銘柄の点はゼロの左、区間はゼロの右まで延びる。平均値は悪化方向だが、改善・悪化を識別するには不確実性が残り、「情報がない」と確定した結果ではない。

ETH 66,131時点/SOL 41,321時点、各14日の同時刻比較。入力・価格を測れる時間が限られた範囲の結果。原レポートの比較条件・区間を保持しており、新たな再推定ではない。

検証記録:原数値と成果の限界

4. 洞察:管理文書には何を残すか

今回の例で重要なのは、仮説の各つながりを、観測できる命題へ落とすこと。「決済は当たったが方向にはつながらなかった」を、ひとまとめに失敗とせず、次に調べる箇所を特定できる。

新しい戦略で、そのまま使う記載欄

① 最上位の目的

どの判断を改善するか。最終の評価指標・資本・費用・リスク条件。

② 仮説から成果までの図

観測情報 → 中間現象 → 最終予測 → 売買 → 成果。各接続へ命題ID。

③ 各命題の検証

対象・単位・時刻・期間/対照/指標・効果量/支持・反証・判断不能の条件。

④ 答えと次の判断

未検証・支持・支持されない・判断不能。原結果リンク/結果によって何を変えるか。

結果を見て図を直す場合は、当初版を残し、変更理由と根拠を追記する。このページは既存研究の現在の整理。新しい研究では、結果を見る前に初期版を固定する。

時間も三つの別欄で管理する
決済の予測期間
どれくらい先のフロー?
価格の予測期間
どれくらい先の値動き?
実際の保有ルール
いつまで・何で閉じる?

原研究は三つとも10秒に置いた。一つの候補として評価した設定で、三つが一致すべきという規則でも、最適値の証明でもない。

Q&A

途中の予測モデルを、必ず全部作らなければならない?

いいえ。建玉状態から直接価格を予測する設計もある。ただし「決済フローを通じて効く」という説明をするなら、その命題を観測で検証するか、未確認と記す。直接予測との比較はこの原runでは未実施。

どこかの命題が支持されなければ、次の検証は禁止?

いいえ。価格情報の有無と、想定メカニズムの説明力は異なる問いなので、並行して調べられる。原研究でも、途中の指標が混在した状態で価格と参考売買を測っている。

売買が黒字なら、途中の命題も正しかったことになる?

ならない。既存の価格情報で選んだ取引が利益を生んだ可能性もある。今回のSOLは、決済圧力あり/なしで同じ売買になった。この場合、正の参照損益は圧力の追加価値を示さない。

根拠:建玉状態から決済を予測すると、価格判断と費用後の売買は改善するか(lightweight-v4原レポート)。この記載事項は戦略研究の事前設計ルールへ追加。原研究の仕様・数値・判定、既存ページは変更していない。